七十二候『鴻雁北✖️アルミダのパパ(『他人の飯には骨がある』)』|担当:華波

華波(かなみ)です。
まいど!

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公式LINEの中のコンテンツで
「七十二候✖️舞台の登場人物」の短編小説の企画をやっておりまして、
第一期はめでたく全12回を終えました。

元々12編と決まっていたわけではなく、単純にキャラ数の弾切れで休止していたのですが、間もなく再開するということで。
(お題は事務局さんから送られてくるはず)

この隙間タイムに手が鈍るといかんので、勝手に、誰に頼まれているわけでもなく、完全に、好きで、書きたくて七十二候番外編を書きました。奇人〜!

LINEコンテンツ内だと、登場人物以外は登場しないからね!!
ナレのみで登場している人間のことは勝手に書くしかないよね!!

ちなみに過去作のアーカイブは、公式LINEに該当の七十二候名を入れると読めます。
(イラスト?も描いているのでよかったら見てね!個人ブログの https://search.ameba.jp/search/entry/%E4%B8%83%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%80%99.html?aid=merry-go-tokyo などで見られます)

というわけで、以下。


七十二候
鴻雁北(こうがんかえる)✖️アルミダのパパ(『他人の飯には骨がある』)

カーテンの隙間から差し込む、矢のようにとがった光が瞼をつく。

反射的に目が覚めたものの、体は重くベッドに沈み、寝返り一つ億劫だ。
そのくせ、頭は冴えて、光の矢を放つ弓の部分……カーテンの隙間のことが異様に気になる。

世話人を呼ぼうにも、こんな日の出の時間にベルを鳴らすのも気が引け、第一、ベルに手を伸ばすのも億劫だ。これ以上、家の者に手のかかる爺だとの評価を受けたくはない。
その程度の矜持は残っている。

数日前に、散歩に出ようとし、玄関を出てすぐの階段で情けなく転び、腰の辺りの骨をやった。怪我程度なんの、と、初めこそ強がってははみたものの”痛み”という名前の武器は何とも強靭なもので、私の意思を簡単に砕き、瞬く間にベッドに縛りつけて、この有様である。

そういえば。
あの占い師は、息災だろうか。
通いの爺が急に顔を出さなくなって、心配してはいないだろうか。
使いを出そうか、いや、だが仮にも街一番の不動産屋の会長ともあろう者が、占いの館に出入りしているなどと噂が広まったら難儀だ(そういった、背徳的なところも気に入っていたのだが)。

頭ばかりが冴える。
しかし体は重いばかりで、まるで囚人の鉄鎖をつけられたような鈍さを感じながら寝返りを、

おや、寝返りが打てる。
痛みが、幾分かましかもしれない。

そういえば、昨日はーーー。

「お父様!」

ノックもせずに息せき切って飛び込んできた我が娘は、自慢の黒髪を振り乱し、
制服と化したモスグリーンのスカートをはためかせ、ハンドバッグをむんずと鷲掴みにし、

もう片方の腕に、見知らぬ青年を抱えていた。

「こんにちは、アルミダのパパ」

なるほど、”アルミダのパパ”は私である。
アルミダのパパは、現在、顔も洗わず、ベッドに横たわり、おおよそ客人を迎えるにはふさわしくない様子で唖然としているわけだが。

娘が連れて来るにしては……これまで紹介された”友人”たちと比べてという意味であるが、派手な様相の青年は、そんなことはお構いなしに、後頭部で束ねた長髪をフリフリと揺らしながらゆっくりとこちらに近づき、

おもむろに布団を剥いだ。

「君、失礼だぞ!」

そう。こうなると、失礼なのは、身支度も整っていない、まばらな髭面でベッドに横たわる私ではなく、朝から唐突に”友人”を連れて部屋に押し入ってきた娘と、自己紹介もないまま見知らぬ爺の布団を剥いだこの男である。

「久しぶり。少しは元気そうで安心しました。」

そう言いながら、青年はさらに、なんの躊躇もなく。

寝巻きをまくり始めた。

「君、おい君!」

爺の枯れた声が部屋に虚しく響き渡る間も青年と娘は「ここ?」「そうです、大腿骨を、右から落ちて」など、溌剌とした声でわけのわからぬ会話を繰り広げていた。

そこから先の記憶はあまりない。
ただ、腰回りをめちゃくちゃに触られて憤慨したことと、
青年の、男にしては長いまつ毛の横顔と、妙に聞き慣れた声と、
これまた、なぜか見慣れた手指の形と、

「じゃあ、また。元気になって。待ってるからね」

という、青年の、去り際の台詞だけが記憶に残っている。

=====

まてよ。ということは……、
そこまで思い出し、枕元の水に手を伸ばした。
何度も水を汲み足し、飲み干し、息を整える。

あれから、丸1日近く眠っていたということか。

数日間寝ついた体は、筋力も衰え、未だ囚人の鎖を引きずっているようではあるが、
あの、足を動かすだけで首先まで痺れる痛みがひいている。

それから、のろのろと、這うように窓まで歩いていき、重いカーテンに中ば掴まるように立ち上がり、また長い時間をかけてカーテンを開いた。
矢のような光は、浴びてしまえばなんてことはない。ただの朝日である。

あぶない。あぶないなあ。死んでしまうところだった。
死んでしまっては、あの占い師のところに散歩に行くことも出来ない。

「健康に長生きするには、できるだけ太陽を浴びた方がいいですよ。骨にもいいし」
「よく散歩してください。ゆっくり考える時間がとれるので、頭がはっきりするよ。骨にもいいし。」
「湿気がたまると骨によくないから、部屋は換気してね」

はっきりした頭に、彼の声が響いてきた。
そう、換気しなければ。
窓に手をかける。まてよ、そうか。

そうか。あれは、あの男は彼だったか。

最後はいつも同じ挨拶。
「じゃあ、また。」

親子で、あの手の男に弱いのだろうか。
しわがれた笑い声を上げながら、なんとか窓を開けたところで、
気配を聞きつけた誰かが、部屋をノックする音が聞こえる。

風が吹き込み、窓の外には、遠く、どこへ渡っていく鳥の群れが見えた。

じゃあ、また。次回!!!

アルミダ「お父様って、なぜかなんでも武器に例えるのよね」

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